No pain, no gain


by sharpens_you_up

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手紙

手紙
東野 圭吾 / 文藝春秋
ISBN : 4167110113
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MacBookを修理に出していたので移動中電車の中ですることがなく久しぶりに東野圭吾の小説を読んでみた。タイトルは「手紙」でいま映画館で上映されている作品です。

犯罪者の家族が受ける社会からの差別がテーマになっているのですが、その差別も特に露骨ないじめなどが描かれているのではなく、「同情しているのだけども、かかわりたくはない。」といったどこにでもありそうで誰でもやりそうなリアルな差別が描かれています。

お兄さんが強盗殺人で逮捕されたせいで、主人公の弟は夢や職や恋人まで失うことになり、とんでもない苦労を背負うことになります。
「犯罪を犯したのは兄で、僕は全く悪くないじゃないか。」と自分の不幸を嘆きます。

よくある能天気な偽善系の小説ならば、この手のテーマの場合「差別をなくす社会を作ろう」的なメッセージを植え付けてくるのだけれども、この小説はその主人公に対し、

「差別はね、当然なんだよ。
 犯罪者やそれに近い人間を排除するというのは、
 しごくまっとうな行為なんだ。
 我々は君のことを差別しなきゃならないんだ。
 自分が罪を犯せば家族をも苦しめることになる。
 すべての犯罪者にそう思い知らせるためにもね。」

という台詞があったり、

ジョンレノンの「イマジン」という曲を例えにして
「差別や偏見のない世界。そんなものは想像の産物でしかない。
 人間というのは、
 そういう物とも付き合っていかなきゃならない生き物なんだ」

というアプローチで、なくすことのできない差別社会にどう向き合えばいいのかと問いかけてきます。

まぁ、最後まで救われない重いテーマの物語ですが、その中で刑務所から送られてくるお兄さんからの手紙を通じて兄弟の絆とは何か、守るべき物とは何か、更生とは何か、しいては人生とは何かを考えさせられる小説でした。ベストセラー小説でもありますし、お暇なら読んでみて下さいませ。
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by sharpens_you_up | 2006-11-30 00:31 | 書籍