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No pain, no gain


by sharpens_you_up

ノルウェイの森

ノルウェイの森 上
村上 春樹 / 講談社
ISBN : 4062748681
スコア選択: ★★★★★
ノルウェイの森 下
村上 春樹 / 講談社
ISBN : 406274869X
スコア選択: ★★★★★

短編小説に飽きてきたのでそろそろ長編を読もうと思いまして、
まんをじして村上春樹の「ノルウェイの森」に手を出した。

日曜日に中央林間の本屋で購入しまして、
月曜日の夜にどんな本なんだろうと本を開いたとたん、
そのまま本を閉じることができなくなり
上下巻あるその小説を一気に最後まで読んでしまった。
読み終わったときには翌日の出勤時間になっていたw

タイトルから外国のノルウェイの森の中を舞台にしたお話かと思っておりましたが、ちがって
ビートルズの「ノルウェイの森」が好きな女性を愛した日本の大学生のお話だった。
舞台の大半はこの大学生の東京にある学生寮で、
結局最後まで外国のノルウェイは出てこなかったw

僕はこのお話を30歳を過ぎてから読んでよかったと思った。
これを10代の多感な時期に読んでいたらきっとこの虚無感に耐えられなかったと思います。
それかまだ未熟な僕は
キズキや直子に振り回される主人公ワタナベの心理が理解できなかったかもしれない。
そのどっちかだったと思う。

この本はベストセラーだったので、相当な批評があるとおもう。賛否両論の。
「ノルウェイの森」は精神的な部分がメインテーマになっているので、
そんなものは人それぞれなので、同じ感想にはならないのは当然だと思う。
だから僕も僕なりの意見を書こうと思いました。

僕の崇拝する養老孟司さんの著書「死の壁」の中に
「人の死は三種類に分類される」と書いてある。
それはむかし学校で習った一人称、二人称、三人称と同じ区分ができるらしい。
(1)一人称:I、自分の死
(2)二人称:You、あなた、いわゆる身近の人間の死
(3)三人称:He、She、It、他人の死

人は死を考えるときにもっとも身近に考えられるのは(1)の「自分の死」のように思うのだが、
実際自分が死んだらそれを見ることができないし、自分の死を悲しむこともできない。
つまり生きてる内は「自分の死」は経験できないということです。
だから日常生活する上で実質本当に影響の出るものは(1)でも(3)でもなく
(2)の「身近な人間の死」なんだと思う。
そして、その身近な人間が、無二の親友や最愛の人であればあるほど
その影響力は、その人の人生までをも大きく変えてしまうものなんだと思います。

「死は生の対極としてではなく、その一部として存在している。」
これは「ノルウェイの森」の中に出てくる無二の親友を失った主人公ワタナベの言葉です。
そう、死は生からかけ離れた独立的な存在ではなく、
残された人間の体の一部としてずっと存在していくものなんだとこの本を読むと分かる。

「ノルウェイの森」は、この大きな悲しみを背負った若者たちのせつない恋愛小説です。
繊細で誠実で孤独な若者たちが何度も挫折や絶望を味わいながら
一生懸命それを乗り越えようとする姿が描かれております。

人間はみな心や精神に歪みがあり、
それを受け入れられるか、気が付かない人が正常な人間らしい。
その歪みを受け入れられない人が精神異常者と呼ばれる人になると書いてある。
僕は幸いにも頭が悪く、心や精神的な歪みに気が付くことがなく普通に生活できているので
排他的な思想で若くして自らの命を絶ったキズキの気持ちは最後まで理解できなかった。
でも直子とワタナベの気持ちは少しだけ理解できたような気がする。
そして、人間が他人にしてやれることの無力さも実感できました。

ワタナベは直子と会えない時間が長すぎて、
どんどん神秘的な女神を作ってしまったんだなぁとか、突撃隊はどこにいったんだ?とか
書きたいことはまだまだいっぱいありますが、ネタバレにしたくないのでこの辺で自重します。
しかし女性の神秘的な美しさを描かせたら村上春樹は日本一なんじゃないかと思ったw
あと性的描写もかなりリアルで随所に出てきます。
でもこれもすべて理由があり、
男にしか分からないかもしれないイメージがそこにあるんです。

これはいい小説でした。
久しぶりに、心に入ってきたというか、読み終わったあとの虚無感はなんともいえない。
ぜひ、時間がありましたら、読んでみてください。
そして、この本について語り合いましょうw
by sharpens_you_up | 2004-10-19 21:08 | 書籍